従業員への事業承継
■「従業員への事業承継」(役員・従業員承継)とは
「従業員への事業承継」(役員・従業員承継)とは、役員や従業員を経営者に昇格させ、事業をバトンタッチすることをいいます。従来より親族内承継に次いで利用されている方法で、近年はその数がより増加しています。2020年において、「内部昇格」の割合が全体の34.1%を占め、「同族承継」(親族内承継)の34.2%とほぼ差が見られなくなっています。
■従業員承継のメリット
従業員承継のメリットとして、以下の点が挙げられます。
・子ども等の親族に適任者がいない場合でも、従業員や役員の中から最も資質のある者を選ぶことができるので、後継者の選択肢が広がる
・会社の状況に精通した者がバトンを受け取ることになるため、親族内承継と同様に他の従業員や取引先の理解を得られやすい
・会社の事業内容について十分把握しており、後継者教育の時間を短縮できる
他方で、デメリットとしては、
・資金力がないことが多い
・使用人としては優秀でも、経営者として優秀であるとは限らない
・会社の借入金につき、個人保証(連帯保証)をしなければならない(「金融機関の経営者保証」)
などが挙げられます。従業員や役員が後継者になる場合、代表取締役社長という「地位」を受け継ぐことで「経営」を引き継ぎますが、株式を取得しなければ、会社の「所有」を取得することはできません。しかし、従業員は資金力が比較的乏しいので、株式(事業)買い取り資金で苦労するケースは少なくありません。また、使用人の立場が身体に染みついていると、使用人としては優秀でも経営者としての資質に欠くケースも多くあります。
最大のハードルとしては「金融機関の経営者保証」です。中小企業の多くは、銀行等の金融機関から借り入れを行っていますが、その借り入れについて、金融機関から新経営者が「連帯保証人」になることが求められます。新経営者本人はやる気があっても、その家族からの反対で後継者になれなかったというケースは枚挙にいとまがありません。もっとも、近年は経営者保証のない金融商品の利用も進み、改善傾向にあります。
■従業員承継の方法
従業員承継の方法として、①従業員が株式をすべて取得する場合、②現経営者が株式を保有する場合があります。
①従業員が株式をすべて取得する場合であれば、「所有」と「経営」が一致し、安定して事業を行うことができます。最も用いられる方法は、株式の購入であり、これを特に「EBO(Employee Buyout)」といいます。しかし、前記した通り、従業員や役員は資金不足の場合が少なくないため、資金的なケアが必要です。例えば、役員報酬の金額を増額させ、将来の資金として貯めさせる方法があります。ケースにもよりますが、新経営者の能力や事業の将来性にかんがみ、株式買い取り資金について金融機関や投資会社等の出資等を受けられることがあります。思い切って、株式を贈与または遺贈する方法もありますが、現経営者の親族との間でトラブルが生じるリスクがあります。
②現経営者が株式を保有する場合もあります。この場合、先代経営者が筆頭株主であり続けるので、重要な決定には先代経営者の顔色をうかがう必要がありますし、先代経営者の一存で後継者が解任されるリスクがあり、後継者にとってはかなり経営がやりにくくなります。対策としては、種類株式を活用し、先代経営者の株式を「議決権制限株式」(議決権がないor制限された株式)にして、後継者に議決権のある株式を保有させる方法があります。ただし、この方法を行うには定款の変更が必要です。
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経歴
- 一橋大学社会学部卒業
- 1998年 公認会計士第二次試験合格
- 1998年 旧中央監査法人(現新日本監査法人)入所
- 2004年 公認会計士登録
- 2006年 石橋税務会計事務所入所
- 2018年 石橋税務会計事務所所長に就任
所属団体・著作等
- 日本公認会計士協会
- 東京税理士会
事務所概要Office Overview
名称 | 石橋税務会計事務所 |
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資格者 | 石橋 治朗(いしばし はるお) |
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